アスペルガー症候群の人の人付き合いの特徴を一言で述べれば、人の中で浮いてしまうことが多いということでしょう。幼児期には一人遊びが中心です。他の子どもと遊ぶことは少なく、遊んでも年長の子にリードされたり、年少の子と同レベルで遊ぶことが多いのです。
つまり同年齢の子どもと対等の相互的な遊びをすることがとても難しいのです。

正直すぎる子どもたち
 接し方のルールがわからず無邪気に周囲の人に対して迷惑なことをしてしまうことがあります。例えば太った友人に対して素直に「太っているね」と言ってしまいがちです。その言葉が人を傷つけるということには少し鈍感なのです。年配の先生に向かって「おばあさん先生おはようございます」と明るい大声で挨拶する生徒もいます。私たちが注意しなければならないことは、こういった言動をする場合にも彼らには悪意はないのです。
ただ社会的ルールがわからず素直に「本当のこと」を言ってしまうのです。正直すぎる子どもたちと言っても良いでしょう。

 子どもでも大人でも社会生活には暗黙のルールがあります。暗黙のルールがわからないために他の子どもから嫌われたりいじめられるアスペルガー症候群の子どもが多いのです。子ども同士で教師や大人に内緒のいたずらをしたり、大人の悪口を言い合う、こういった楽しみは貴重なものですし、わざわざ口に出して確認する必要もない子ども同士の間の秘密のことです。
こういった暗黙の秘密がわからず、大人に問われるままに子ども同士の秘密を話してしまうのです。ここでも友人を裏切ったという認識も悪意もないのが特徴です。

同年齢の子どもと波長があわない
 幼児期には他の子どもと遊ぶことより一人遊びを好む子どももいますが、多くのアスペルガー症候群の子どもは成長するにつれて他の子どもに関心を持つようになります。ただ同年齢の子どもとの付き合いは苦手で年長の子どもにリードされて遊んだり、年少の子どもを指図して遊ぶことを好みます。その場を「仕切りたがる」ことも特徴の一つで、他の子どもが自分の思い通りに遊んでくれている間は遊べますが、自分の思い通りに動いてくれないとかんしゃくをおこしたり一人遊びに戻っていったりしがちです。

積極的すぎることもある
 アスペルガー症候群の子どもの人付き合いの問題は積極的すぎるという形であらわれることがあります。異性を好きになることもあります。皆の前で「○○ちゃん大好き」と大声で叫んでほっぺにキスしようとする小学生もいます。小学生になればこういうことは恥ずかしいと思うのが普通ですが、アスペルガー症候群の子どもは羞恥心を感じるのが遅いようです。
誰彼かまわず、質問を浴びせかけることもあります。初対面の人に向かって「家族は何人ですか?体重は何キロですか?身長は何センチですか」とやつぎばやに質問したり、電車や飛行機の話など自分の関心のある話題を一方的に話しかけたりするのです。相手が困惑していたり、迷惑がっていても気がつかず、自分にとって関心のあることは相手にとっても関心のあることだと思ってしまうことがこういった行動の一つの理由です。