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統合失調症:どんな病気か

なぜ誤解や偏見が

統合失調症は、つい最近までは「精神分裂病」
と呼ばれていました。

この病名呼称自体が偏見や差別へ影響しているのだと
議論されてきました。特に「分裂」という言葉は、
一般にも悪いイメージを連想させがちです。

例えば、仲間内で異論を唱えたり、別の行動をとっ
たりすると、「分裂させた」 などと非難され、
悪い人であるようなレッテルを貼るのに使われます。
ですから、「精神分裂病」という呼称は、
人格自体を否定的に捉え、患者さんを悪い人のように
イメージさせる響きがあります。

精神神経学会でこの病名呼称問題を検討し、
家族会などの意見も聞き、平成十四年度の総会で呼称変更を
決議し、「統合失調症」と呼ぶことになりました。


原因

今もよくわからず、いろいろ推定されてきました。
そのため、それらの推定があたかも事実であるがごとく
一人歩きし、誤解や偏見を生む理由の一つになりました。

家族内に統合失調症や他の精神疾患に罹患する方が
何人か発生することもあり、
遺伝の可能性が推定されてきましたが、
何ら科学的根拠が見つかっていません。

また育て方の問題も取りざたされてきましたが、
極端な例からの推定で、原因というにはあまりにもお粗末で、
結果は親を苦しめました。

現在では、原因として、
脳内の神経伝達物質(神経から神経へと情報が伝えられるときに働く微量の物質)と
そのレセプター(神経伝達物質をキャッチする部位)の
バランスの異常が考えられるのではなかろうかというのが
おおかたの見方ですが、

今日までの経緯からすると
一元的な考えは的はずれなことが多いようで、
複数の要因が重なっていると考えるのが妥当かもしれません。 

病気の始まり

この病気の始まり方は実にさまぎまです。
明らかに統合失調症ではないかとわかるような始まり方から、
最近少し変わったがこれも大人になる変化かな
見過ごしてしまう始まり方まであります。

前者の場合には本人の混乱や家族の驚きは大変ですが、
これは精神科的な病気ではないかとすぐに推定がつきますから
専門の病院に行くことを思いつきますが、

後者の場合にはまさか精神疾患とは考えず、
結果的にはズルズルと専門の病院を受診するのが
引き延ばされ治療の開始が遅れることが多くなります。

病状

急性幻覚妄想状態

急性発症の一つのタイプです。患者さん本人からみますと、
何となく周りの様子がおかしいと感じる短期間の後、
急に周りの様子が異様となり、害意をあらわにし、
自分を圧倒するように感じられます(妄想気分)。

(現実にはそのようなことはないのですが)やがて周りの人の
行動がすべて自分と関係があるように受けとめ(関係妄想)、
同級生や同僚あるいは隣近所や追行く人々など、

周りの人が患者さんの噂をしたり悪口を言ったり(被害妄想)、
何か特殊な組織あるいは
不特定の人々が尾行追跡したり(追跡妄想)、

電話やテレビあるいは天井や壁に盗聴器や監視カメラが
仕掛けられていると確信します。

そして、実際には何も話していない周りの人や知らない人
あるいは神様や悪魔のはっきりした声が聞こえます(幻聴)。

患者さんにとっては恐ろしいかぎりの事態が始まったのです。
患者さんはその恐怖におびえたり、あるいはその原因を
確かめ誤解を解こうとしたり、あるいはそれに対抗したり
防衛しようとします。

本人は現実とは異なる受けとめ方をし、
現実には聞こえない声を聞いていますので、
周囲の人がそのような話を聞きますと、
これはおかしいということになります。

ただ、このときに患者さんが間違っているからと、
つい一生懸命説得したり言い聞かせたりしますが、
これは徒労に終わるだけでなく、
ときにはさらに妄想を確信させるもとになります。

急性錯乱状態

 この場合、会話も行動も支離滅裂です。
しかも、感情の起伏が激しく、怒り、泣き、笑いと
コロコロ変化します。一見、意識が障害されているのでは
ないかと疑われることすらあります。

急性期のもっとも激しいときには
あるいは意識が障害されることもあるかもしれません。
この時、
やはり幻覚や妄想が内面で渦巻いていることもほとんどです。

その他に、躁病のように、比較的まとまりはあるのですが
のべつまくなしに喋り続け、
活動も活発で止むことを知らないほどになることもあります。

重要な兆候

急性期の始まりかあるいは前兆として
大変重要だと考えられる二つの兆候があります。

一つは睡眠障害、
もう一つは「よーし、やるぞ」という一念発起
ともいえる態度の転換です。

睡眠障害とこの一念発起とはしばしば密接に結びつきます。

また、前述のように試験とか仕事上の転換点、
あるいは学校や職場でのイベント、就職や結婚といった
人生の転換点などが、あるいは誘発するのでしょうか、
わりに結びつきます。

気をつけたいこと

睡眠障害は周りでも気づくと「無理しないように」と
配慮することもできますが、一念発起のような態度の転換は
むしろ積極的に評価して後押しすることが多くなり、
かえって病状悪化の後押しをしかねませんので
注意を要する問題かと思います。


これと関連して急性期も含め病気の始まりに
何か前述のような環境要因が重なりますと、
病気そのものもその環境要因の結果であると考え、

統合失調症ではなく心因反応や神経症と判断することがあります。

このような混同が起きる一つの原因に
統合失調症に対する偏見が働いていると思います。

重要なことは病気をきちんと診て、
適切な方法で治療することですから、
このような混同は避けねばなりません。

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