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行為障害とは何か

 行為障害は、他人の基本的な権利を無視し、社会的な規則を破るなどを
持続的に繰り返す児童思春期の行動の障害です。
行為障害として取り上げられる行動は、次の四つの領域にわたります。
①人や動物に対する攻撃性、
②他人の所有物を破壊する、
③嘘をつくことや窃盗
④重大な規則違反。

以下はこれらか具体的な行動例です。
①人や動物に対する攻撃性‥いじめ、暴力による脅迫、
 とっくみあいのけんか、残虐な行為、武器の使用、性行為の強要など
②所有物の破壊‥意図的な放火、器物破壊など
③嘘をつくことや窃盗‥万引き、空き巣、詐欺、虚言癖など
④重大な規則違反‥ずる休み、無断外泊、夜間家を抜け出すなど

 行為障害をもつ子どもは、親や先生あるいはその他の目上の人との間に
次のような問題を日常的に引き起こしています。
拒否的な態度をとる。権威者を無視し、意図的に指示に逆らう。
わざわざ人をいらだたせる行動をとったり、敵意をあらわにするなどです。

先に述べた行為障害には該当しなくても、このような状態が続いている場合は、
精神医学的には反抗挑戦性障害と診断されます。
どちらも他者に対する攻撃性のあらわれという点では共通しています。
行為障害は身体的攻撃と物理的な破壊を表す
という点ではより深刻で周りを悩まします。

不安な気持ちになる自分-「いい子」を演じるのに疲れたわたし
ご覧ください。

タイプ分け

 行為障害は、問題行動がなされる状況からいくつかのタイプが区別されます。
一つは集団や仲間との関係を持っていて、
この影響のもとで、問題行動が生じているタイプです。
もう一つは社会的には孤立している子どもに見られ、
単独で攻撃的行動がなされるタイプです。
前者は集団型、後者は単独攻撃型といいます。
もちろんどちらとも割り切れないタイプもあります。

 行動が、目的をもって計画的になされるか、その場の状況が引き金となって
衝動的あるいは反応的になされるのかも重要な意味があります。
このような問題行動の発生の状況の違いは、背景となる要因と関連が深く、
前者では対人関係や環境との葛藤が関連するのではと思われます。
また後者では抑制の欠如に関連してADHD(注意欠陥多動性障害)や
その他の障害について検討しなければなりません。

 また発症年齢によって次の二タイプが分けられます。
行為障害が初めてみられた年齢が十歳になるまでのものが、小児期発症型です。
それに対し、十歳以降であるものが青年期発症型です。
一般には、前者は男児に多く、友人関係が乏しく、
ADHDを合併していることが多いといわれます。
後者は、小児期は攻撃的な行動がみられず、仲間をもっており、
しばしば集団での反社会的行動となって現れるものです。
このタイプは、問題行動が青年期のあいだにみられなくなり
予後がよいことが知られています。

行為障害と非行

  非行は法律や社会的な規範にはずれた行為を意味します。
わが国では少年法に規定され、犯罪少年、触法少年、虞犯少年が
区別されるなど法律的な規定に基いて形成された概念です。

それに対し、行為障害は精神医学的あるいは心理的な問題として
行動そのものにもとづき、しかも反復持続する行動様式として規定されています。
両者はこの問題に向かう立場の適いで、異なった用語が用いられていますが、
重なり合うものです。

行為障害の成り立ち

 行為障害の発症に関連する要因として、関与することがある因子は実に多様です。
なかでも社会的背景、家族的要因、個人の気質・遺伝的要因、
ある種の精神障害などが重要なものと考えられます。

いずれにしても、一人一人の子どもについて、行為障害の発症に至る筋道にそって
その要因を理解することが大切であり、治療の前提です。

行為障害を引き起こすとして取り上げられてきた要因

1、養育環境に関する要因
  親子の絆の確立の失敗、若年の母親、父親不在、夫婦間の不和
  親の精神的問題(抑うつ、アルコール症、精神病、人格障害
  親のしつけの失敗(不適切な指導、体罰、一貫性がない、予測できない懲罰)
  親による拒絶、遺棄、ネグレクト、身体的・性的虐待
  衝動性、攻撃、反社会的行動のモデルがある、言語のよる問題解決の教育不足
2、社会的問題
  社会的孤立、貧困、周囲に暴力集団や薬物がある
  非行少年団への親近感、地位の獲得の追求
3、個人の持っている要因
  言語性知能指数が低い(友達に引きづられやすい、適応的な対処行動に欠ける)
  神経学的要因(セレトニン系の機能不全、精神運動発作、頭部外傷)
  気質(気難しい、しつけにくい、変化に弱い、過度の活動性、好奇心が強い)
  他の精神障害(ADHD,気分障害、PTSD、学習障害、物質乱用、)など

 思春期に発症する行為障害は、成人の反社会的行動に比べると、
環境の要因が強く関与しているといわれます。

児童期の行為障害では、強い衝動性をもつなど子どもの気質特性と
不適切な養育環境、特に虐待が発症要因となっていることが
相互に発症の危険性を高めるとして注目されます。

 ここに記されている多種の危険因子は、
いくつかが重なると発症にいたることがあるというものです。
単独で発症要因というものはありません。
実際これらの要因を持っていてもほとんどの子どもは、行為障害に至りません。

 しばしば親または大人と子どもの間に次のような負のらせん構造が生まれ、
問題を深刻化し、拡大します。
①まず子どもが大人に対し嫌悪と憎悪を強め、威圧的な行動をとります。
②それに対し大人は苛酷な罰を加えたり一貫性のない養育指導行動をとります。
③その結果子どもはますます挑戦的で反社会的行動にでるという図式です。
このようならせんが回り始めるとますます敵対することにつながります。

併存する障害

 行為障害は、しばしば他の精神医学的な障害と合わさってみられます。
行為障害といっしょに見られる障害という意味で、これらを併存障害といいます。

併存障害は、行為障害をうみだす下地となっている場合、
併存障害の症状の代理的な現れである場合、
行為障害に続いて起こっている場合など両者の関係は一様ではありません。
この意味でも行為障害には注意して精神医学的な目を向けることが望まれます。

 併存障害としては多動性障害(注意欠陥多動性障害‥ADHD)や
心的外傷後ストレス障害(PTSD)、あるいは解離性障害などがよく知られています。
その他には、学習障害、表出性言語障害、うつ病や、双極性障害、
不安性障害などもみられることがあります。

治療

 行為障害は、子ども本人はもちろん家族や学校など
子どもをとりまく人々に重大な影響をもたらします。

その治療は、基本的に自らの行動を考えこの事態を変えていこうとする本人の意志と、
環境の調整に大きく頼ることになります。
しかしながら、一般に本人が治療を受け入れること自体がそれほど期待できません。

それどころか、外部から介入し始めると両者の間の対立が激化しがちです。
まずは家族や学校あるいは地域でこうした青少年を受け入れ
支える条件を準備することから始めなければならないでしょう。

 治療の第一は安全で安定した治療環境を作ることでしょう。
それは、有効で明確な枠組みをもつことです。
そしてその枠組みにもとづいて子どもの行動を制限することが求められます。
なかでも家庭でこの枠組みと行動の制限をもうけ、
これを徹底することが鍵となります。

そのためには、まず親を支えるためのカウンセリングが重要です。
行為障害をもつ子どもの家庭では、親が葛藤やストレスを抱え、
抑うつ的になっていたり、しつけの一貫性を保つことや、
適切な行動についての期待が唆昧になっていたりします。

 そのほか、学校、地域社会での受け入れと指導・支援も重要な役割を果たします。
それぞれの場で、キーになる人とのつながり、
そこにおける枠組みと行動の制限を通じて、行動を修正していくことになります。

 精神医学的な障害を有する場合は、薬物療法が適応となります。
ADHDに対する中枢刺激薬、うつ病に対する抗うつ薬などで、
原疾患が改善すれば、行為障害が改善する可能性もあります。

 行為障害は、他の精神医学的な障害が併存する場合を除き、
非行として矯正教育の対象となることもあります。

少年法の規定により、十四歳を超える少年は家庭裁判所の審判に付され、
十四歳未満の少年は児童福祉法のもとに規定されている児童相談所において、処遇されます。

 このように行為障害の治療は、医療のみではなく、児童相談所、
心理カウンセラー、教育相談所、学校関係者など多方面からの
情報を総合して計画し、連携して行われる必要があるといえましょう。

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