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自閉症

3つの特徴

 自閉症は、幼児期に発達や行動の異常を示すことによって診断されます。
その主な特徴は、次のような三つの領域に分けることができます。

 第1は、相互的な対人関係の障害です。すなわち、乳幼児期から
母親をはじめとして、兄弟や他の子どもや大人への関心や関わりがとぼしい、
つまり幼児なりの対人関係・社会性の発達が障害されていることです。

母親に甘えたりすることもなく、母親と遊ぶことも喜ばず、
むしろ一人遊びが好きで他人から関わられることも好まない傾向が目立ちます。
また人と視線を合わせないことも、早期から目立ちます。

 第2は、言葉を含むコミュニケーション能力の発達の障害です。
多くの自閉症と診断される子どもは、言葉の表現と理解の発達が遅れます。

また言葉が出ていても、それを親との関わりの中で使うことがないので、
場面に関係なくしゃべるとか、会話が成り立たない、質問しても答えがうまく言えず、
質問全体や一部をそのままオウム返しに言う、などのことが目立ちます。

また言葉がうまく表出されないだけでなく、
言葉に代わるコミュニケーション手段である
ジェスチャーや身振り、表情を使って表現することもできず、
他人のジェスチャー、身振りや表情の理解もうまくできません。

また通常、言葉と同時期に出現する指さしの発達も遅れ、
むしろ言葉よりも後になることが少なくありません。
また自閉症児の3分の1から4分の1には、
1歳過ぎに少数ながら、表出できていた言葉を失う子どもがあります。

 第3は、行動、興味や活動がかたよって
執着的であったり、パターン化しやすいことです。

通常、幼児が好むおもちゃではない、紐とか棒とかビンの蓋や、
プラスチックの容器に執着して集めたり、
回転する換気扇やタイヤなどが好きだったり、
トイレや交通標識、数字や文字やマーク、
水や揺れる木の葉などに執着するなどのことがあります。

また習慣を変えることには強い抵抗があり、
行きなれたスーパーや公園に行く場合、
いつもとちがう道を通ることをいやがる、
気にいった服や靴以外を身につけたがらない、
花瓶などいつもの置き場所にないと気にしてなおすなどのことがあります。

また体全体あるいは部分のパターン化した行動(常同行動という)があります。

これは、手や指を眼前でひらひらさせたりくねらせたり、
横目でものを見たり、つま先立ちで歩いたり、
くるくると回ったり、ぴょんぴょん跳んだりなどのことです。

 以上の3つの領域の異常が、
明確にみられるときに自閉症の診断がなされます。

それらの症状が、もっともよくみられるのは、
2歳から4歳くらいの幼児期で、
ほとんどの自閉症児は、この時期に診断されます。

早期徴候

 自閉症を診断するための典型的な症状がみられやすいのは、
2歳から4歳くらいの幼児期ですが、
もっと早い時期に自閉症を診断するための
手がかりとしての早期徴候は、
母親から乳児期のことを詳細に聞き取ることや、
自閉症と診断された子どもの乳児期のビデオ記録を
分析することなどで、これまでさかんに研究されてきました。

その結果では、とくに典型的な自閉症児では、
ゼロ歳児のころからすでに反応のとぼしいことが報告されています。

 兄弟などと比較して反応のとぼしい、そのかぎりではおとなしい
手のかからない赤ん坊であったということは、よく言われることです。

ゼロ歳児のころからすでに視線が合わなかったり、
あやしても反応がとぼしかったり、
母親の後追いをせず母親がいなくても平気であったりなどの、
対人的な反応のとぼしい傾向がみられることがあります。

しかし1歳以前には問題に気づかれないことも少なくありません。
このため1歳以前に自閉症の診断をすることは、
現在、まだ可能ではありません。

治療

 自閉症を原因的に治療する治療法はありません。
自閉症の治療は、第一に発達の促進、第二に問題行動への対応、
さらに第三には医学的合併症への対応、の三つの側面からの関わりが大切です。

発達の促進

 現在のところ、自閉症の発達を促進する効果が認められた薬物はありません。

このため自閉症への治療の根幹は、
適切な療育的対応を発達段階に応じて行うことです。
自閉症を疑われた乳幼児には、
まず最初に母子の関わりを豊かにしていく励ましが必要です。

その後、子どもの発達の状態によっても異なりますが、
専門的な障害児集団に参加し、
そこを経て幼稚園および保育園などの
健常児集団に移行するというのが、幼児期の自閉症の療育の基本です。

 学齢になれば、適切な就学先を決定することが重要です。
その後、多くの年長自閉症児は、
養護学校高等部を経て作業所に入りますが、
一部には企業就職を果たすものもあります。

そのような青年は、必ずしも知能が高くはないものの、
仕事を根気よく正確に繰り返す能力の高い人が多いとされています。

 このように課題に根気よく取り組む構えを
小さいころから養うことは、自閉症児の将来の社会参加を
実りあるものにするために、意義あることです。

このためにも、小さいころから、
家庭でも家事の手伝いなどの役割遂行をバックアップし、
それを拡大し、その水準を向上させていくことは、
専門的対応の積み重ねと併せて、とても重要なことです。

問題行動への対応

 問題行動は、激しい攻撃的な行動のように周囲にとって
危険な行動や、自傷行為(自分の体を叩いたり打ちつけたり、
じぶんの傷口をえぐつて悪化させるなど)のように
本人にとって危険な行動や、より軽度な周囲を戸惑わせたり、
困らせたりする行動をいいます。

この間題行動は、周囲からそのように判断されるものであり、
周囲の許容性によって問題行動の範囲は変化します。

許容性の低い環境では些細なことが
問題行動とされる傾向があり、そうでない場合は、
それが問題とされないですむということがあります。

いずれにしても、周囲にいちじるしい迷惑がかかったり、
周囲や本人に危険な行動には、何らかの対処が必要です。

しかし、些細なことは、むしろ見過ごしたほうが、
結果的によいことが多いものです。

対応の原則

 問題行動への対応の原則は、以下のつ6のことがあります。

① 原因を同定し除去することです。
歯痛などの身体的不調が原因となることも
あるので、身体的な状態の検討も大切です。

② 原因不明か除去困難なら、より好ましい活動に誘うことです。
他の行動に関心を移すことによって、
問題行動への固着を軽減させることです。

③ 運動をさせることです。
運動はストレスを軽減する効果があり、問題行動の原因は不明でも十分に運動すると、問題行動が軽快することが少なくありません。

④ 軽い問題行動は無視することです。
軽度の問題行動をくり返し注意すると、逆にそれへの執着が強まり問題行動が強度となることがあります。

⑤ 強度な問題行動は、まず抑制を試み、問題行動がなかった場合に評価する対応を試みることになります。

⑥ 以上の方法が奏効しない場合には、
児童精神科医などの専門医により、
強力精神安定剤 (最近は抗精神病薬といわれる)である
ピモザイド(オーラップ)やハロペリドール(セレネース)などの処方を受けることです。

医学的合併症の対応

 自閉症の医学的合併症としてもっとも重要なものはてんかんで、
自閉症の約20%は、成人するまでとくに思春期に、てんかん発作を生じます。

 その他にもきわめて多くの医学的合併症がこれまでに報告されています。
それらの一部をあげると、
気分障害(躁うつ病的状態)、精神病性症状(被害妄想など)、
チック障害、登校拒否、家庭内暴力、抜毛症、摂食障害、結節性硬化症、神経線維腫症、ダウン症候群や脆弱Ⅹ症候群などの染色体異常などですが、
それぞれについては、必要に応じて専門的対応がなされることになります。

経過と予後

1970年代までの欧米とわが国の自閉症の主な予後研究によれば、予後良好
とされる自閉症児の比率は、20%以下です。

しかし1980年代の小林隆児らによる多数例の報告では、良好の比率が35%程度に上昇しています。

この差異は、この間の自閉症児の早期対応、療育体制および社会での受け入れ体制などの
進歩を反映したものと思われます。

 自閉症は、完治する障害ではありませんが、原則として悪化することはありません。
すべての自閉症児は、時間経過ともに、その子どもなりに必ず発達します。

したがって、小さいころからの正しい障害への理解を基礎とした適切な療育の継続と、
社会の受け入れ体制の充実によって、自閉症児の適応は、今後さらに向上すると期待されます。

まとめ

 自閉症の原因が不明で有効な薬物がない現状では、
保育的および教育的方法にもとづく療育が、自閉症治療の基本的方法です。

自閉症児には、その子どもなりの発達的変化が時間とともに必ず出現するので、
それに依拠した長期的な関わりが大切です。

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